看護学生のみなさんにお知らせです!
このたび、「らくらく関連図」アプリにIgA腎症の関連図を追加しました。実習で腎臓内科を回る方や、検尿異常から始まる腎疾患の流れがつかめずに困っている方に、ぜひ使ってほしい1枚です。
IgA腎症は「健診の尿検査でひっかかっただけで、本人は元気」という患者さんが多く、症状が乏しいのに、静かに腎機能が落ちていくという、看護学生にとってイメージしにくい疾患です。この記事では、追加した関連図の流れにそって、原因から症状・合併症までを1本の矢印でつなげて解説します。
IgA腎症とはどんな病気?

IgA腎症は、腎臓の糸球体にあるメサンギウム領域に、免疫グロブリンのひとつであるIgAが沈着することで炎症が起こる病気です。慢性糸球体腎炎のなかで日本で最も頻度が高く、指定難病66番に指定されています。国内の患者数は約33,000人と推計されています(出典:難病情報センター「IgA腎症(指定難病66)」)。
特徴的なのは、見つかり方です。多くの患者さんは学校検尿や職場健診で偶然、血尿や蛋白尿を指摘されて受診します。つまり初期は無症状。「どこも痛くないし元気なのに、腎臓が悪いと言われた」という状態から始まる病気だと理解しておくと、後の看護がイメージしやすくなります。
正常な糸球体は、どうやって尿をつくっている?

関連図を読む前に、正常な腎臓の働きを確認しておきます。IgA腎症の症状・合併症は、すべて「濾過障壁が壊れる」という1点から枝分かれします。ここを押さえると、あとの4つの流れが全部つながります。
腎臓には片側約100万個のネフロンがあり、その入口が糸球体です。糸球体は毛細血管が毛糸玉のように集まったかたまりで、ここで血液をこして原尿をつくります。このとき、血液と原尿のあいだにある3層の「ふるい」を、まとめて糸球体濾過障壁(ろかしょうへき)と呼びます。
この濾過障壁は、血液の側から順に3層構造になっています。1層目の血管内皮細胞には小さな窓(有窓構造)があいていますが、赤血球などの血球は大きすぎてここを通れません。2層目の基底膜はマイナスの電気を帯びていて、同じくマイナスの電荷をもつアルブミン(蛋白質)を電気的にはじき返します。3層目の足細胞(ポドサイト)は、タコの足のような突起がすき間をつくって、最後の関門になっています。
そして、この毛細血管の束を内側から支える「土台」にあたるのがメサンギウム細胞・メサンギウム基質です。IgA腎症で最初に壊れるのは、この土台の部分です。
正常なら、赤血球(大きい)も蛋白質(マイナス電荷ではじかれる)も尿には出てきません。だから健常者の尿は、潜血もタンパクも「−」になります。逆に言えば、尿に赤血球や蛋白質が出ている=濾過障壁が壊れている、ということです。
IgA腎症の原因の関連図

原因 免疫グロブリンの異常

IgA腎症の出発点は、体を守るはずの免疫グロブリン(IgA)そのものに異常が起きることです。
まず、異常なIgA(免疫グロブリンA)が産生されます。IgAは本来、のどや腸などの粘膜を守る抗体ですが、この異常なIgAは体にとって「見慣れない形」をしています。
すると免疫系が異常を認識し、それに対する自己抗体を産生します。自己抗体と異常IgAが結合してできたかたまりが免疫複合体です。
この免疫複合体が血液中を循環し、やがて腎臓の糸球体へ運ばれます。そして糸球体のメサンギウム領域に沈着します。ここが、この病気の決定的な一歩です。
沈着した免疫複合体は補体を活性化させ、メサンギウム細胞が活性化・増殖します。増殖したメサンギウム細胞は炎症性サイトカインを産生し、糸球体に炎症・障害が起こります。この状態がIgA腎症です。
ポイントは、細菌やウイルスが腎臓を直接攻撃しているのではないということです。自分の免疫のはたらきの結果として、自分の糸球体が傷つけられています。だから治療でステロイドや免疫抑制薬が使われるのだ、とつなげて覚えておきましょう。
IgA腎症の症状の関連図

ここからは症状です。この記事では、代表的な肉眼的血尿と浮腫を取り上げます。この2つは、どちらも「糸球体の炎症増悪 → 糸球体毛細血管壁損傷 → 糸球体濾過障壁の透過性亢進」という同じ3ステップから始まります。違うのは、そこから何が漏れるかだけです。赤血球が漏れれば血尿、蛋白質が漏れれば浮腫の流れに入ります。
症状① 肉眼的血尿

糸球体の炎症が増悪すると、糸球体の毛細血管壁が損傷します。すると糸球体濾過障壁の透過性が亢進し、本来は絶対に通れないはずの赤血球が尿中へ漏出します。
漏れ出す赤血球の量が多くなると、尿が赤色・赤褐色に変化し、見た目にもわかる肉眼的血尿になります。実際には真っ赤というより、コーラ色・紅茶色・赤褐色と表現されることが多く、患者さんは「おしっこの色がおかしい」と驚いて受診します。
なお、漏出量が少ないうちは色の変化までは起こらず、検尿ではじめてわかる顕微鏡的血尿にとどまります。IgA腎症で健診発見が多いのは、この段階の患者さんが多いからです。炎症が急に強まる引き金としては、かぜなどの上気道感染がよく知られています。「かぜのあとにコーラ色の尿が出た」というエピソードは、実習で必ず確認したい情報です。
もうひとつ大事なのが、出血している場所の見分けです。糸球体を無理やり通り抜けた赤血球は形がゆがむため、尿沈渣では変形赤血球や赤血球円柱が見られます。これは「出血源が膀胱や尿管ではなく、糸球体である」ことを示す所見で、膀胱炎や尿路結石の血尿との鑑別点になります。
症状② 浮腫

血尿と同じ3ステップ(糸球体の炎症増悪 → 毛細血管壁損傷 → 濾過障壁の透過性亢進)のあと、今度は蛋白質が尿中へ漏出するルートです。マイナス電荷ではじかれていたアルブミンが通過できるようになり、蛋白尿が出ます。
漏れる量が増えて大量蛋白尿になると、血液中のアルブミンが減っていきます(低アルブミン血症)。ここが浮腫を理解するうえでの核心です。
アルブミンは、血管の中に水を引き止めておく力=血漿膠質浸透圧を生み出しています。アルブミンが減るとこの血漿膠質浸透圧が低下し、血管内の水分が間質へ移動していきます。
さらに、血管内の水分が減ったことで体は「血液量が足りない」と判断し、腎臓で水分・ナトリウムを貯留しようとします。こうして体全体の水分量が増え、間質にたまった水分と合わさって浮腫となって現れます。
観察のポイントは、まぶた・顔面と下腿です。朝起きたときの顔のむくみ、夕方の足のむくみ、靴下のゴム跡などは、患者さん自身が気づける変化です。あわせて体重の増減を毎日同じ条件で測ることが、浮腫を数字で追ういちばん確実な方法になります。
IgA腎症の合併症の関連図

続いて合併症です。ここではネフローゼ症候群と高血圧を取り上げます。どちらも、症状②で見た蛋白尿から枝分かれしていきます。同じ「蛋白尿」から、片方は血液中のアルブミンが減る方向へ、もう片方は尿細管を傷つける方向へ進む——この分岐を意識して読んでみてください。
合併症① ネフローゼ症候群

浮腫の流れと途中まで同じです。糸球体の炎症増悪 → 毛細血管壁損傷 → 濾過障壁の透過性亢進 → 蛋白質が尿中へ漏出 → 蛋白尿 → 大量蛋白尿 → 低アルブミン血症と進み、大量の蛋白尿と低アルブミン血症がそろった状態がネフローゼ症候群です。IgA腎症は初期には軽い蛋白尿でとどまることが多いのですが、炎症が強い症例ではここまで進みます。
ネフローゼ症候群になると、浮腫は下腿やまぶただけにとどまらず、胸水・腹水・全身の高度な浮腫へ広がることがあります。体重が数日で数kg増えることもあり、水分出納と体重の管理がケアの中心になります。
もうひとつ注意したいのが、尿に出ていくのはアルブミンだけではないという点です。免疫グロブリンが失われれば感染しやすくなり、凝固を抑える蛋白が失われれば血栓ができやすくなります。「蛋白質が体から抜けていく病態」としてとらえると、感染予防や血栓の観察がなぜ必要なのかが腑に落ちます。
合併症② 高血圧

こちらは少し長い流れですが、「蛋白尿そのものが腎臓を壊していく」という一本の物語です。
濾過障壁の透過性亢進によって蛋白質が尿中へ漏出し、蛋白尿になると、その蛋白質はその先の尿細管を通っていきます。本来ほとんど蛋白質が来ないはずの場所に大量の蛋白質が流れ込むため、尿細管への蛋白質負荷が増加します。すると尿細管間質に炎症が起こり、慢性化すると尿細管間質の線維化が進んでかたくなります。
線維化した組織は血流も悪く、機能も戻りません。その影響で糸球体硬化が進み、はたらける機能ネフロン数が減少します。ネフロンが減れば、当然糸球体濾過量(GFR)が低下します。
GFRが下がると、体から水分・ナトリウムの排泄が低下します。体内に水分とナトリウムがたまれば、それだけで血圧は上がります。
さらに腎臓は、腎血流の低下を「体全体の血液が足りない」と受け取り、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)を活性化させます。アンジオテンシンⅡが血管を収縮させ、アルドステロンがナトリウムと水の再吸収を増やすため、循環血液量・末梢血管抵抗が増加し、高血圧になります。
そして、この高血圧がまた糸球体に圧をかけて障害を進める——「蛋白尿 → 腎障害 → 高血圧 → さらに腎障害」という悪循環ができあがります。治療でRAS阻害薬(ACE阻害薬・ARB)と減塩がここまで重視されるのは、この輪をどこかで断ち切るためです。
この悪循環が長く続いた先にあるのが、末期腎不全です。予後については、成人発症のIgA腎症で10年間に透析や移植が必要な末期腎不全に至る確率は15〜20%、20年間で約40%弱とされています。ただし、降圧薬(特にRA系阻害薬)や副腎皮質ステロイド薬の積極的な使用により、1996年以降は予後が改善しているとの報告もあります(出典:難病情報センター「IgA腎症 診断基準等」)。
患者さんの多くは10〜30代で診断されます。「治療を続けるかどうか」が、その人の20年後・30年後の生活を左右する——この時間感覚は、看護を考えるうえで欠かせない視点です。
IgA腎症の検査
IgA腎症の検査は、①尿で「何がどれだけ漏れているか」を見る → ②血液で「腎臓がどれだけ働けているか」を見る → ③腎生検で「確定診断と重症度」を決めるという順番で組み立てられています。ひとつずつ何を知るための検査なのかを押さえておくと、実習でデータを見たときに意味が読み取れます。
尿沈渣で変形赤血球や赤血球円柱が見られれば、出血源は膀胱や尿管ではなく糸球体だと判断できます。また、尿蛋白の量はそのまま病気の勢いを表すため、治療の効果判定にも使われます。
原因の関連図で「異常なIgA」と「補体の活性化」が出てきたことを思い出してください。血清IgA・血清IgA/C3比・血清補体C3は、まさにその病態を血液から見にいく検査です。関連図と検査データが1本の線でつながります。
ポイントは、IgA腎症は腎生検をしないと確定診断できないということです。実習で受け持つ患者さんが「検査入院」で入っている場合、その目的はほぼ腎生検です。検査後は出血予防のための安静が指示されるので、看護計画では安静度の保持と苦痛の緩和が中心になります。
Oxford分類のなかに尿細管間質線維化が入っていることに注目してください。合併症②の高血圧で見たとおり、尿細管間質の線維化は「もう戻らない変化」です。だからこそ予後を左右する項目として、組織評価にきちんと組み込まれています。
IgA腎症の治療
治療の柱は「炎症を抑える」と「蛋白尿を減らす」の2本です。これは、関連図の「糸球体の炎症増悪」と「蛋白尿」という2つの分岐点を、それぞれ狙い撃ちにしているということです。
「安静にしていなさい」と言われがちな病気ですが、過度の運動制限は不要とされています。若い患者さんの生活を必要以上に狭めないためにも、ここは正しく理解しておきたいところです。一方で、う歯や扁桃炎といった感染巣の管理は、異常なIgAが産生される場をコントロールするという意味で重要になります。
RAS阻害薬が「降圧薬なのに腎臓を守る薬」として使われる理由は、関連図をたどるとよくわかります。糸球体の出口側の血管をゆるめて糸球体内の圧を下げるため、血圧が下がるだけでなく蛋白の漏れそのものが減るのです。蛋白尿が減れば、尿細管への負荷 → 線維化 → 糸球体硬化という悪循環にもブレーキがかかります。
降圧目標が蛋白尿の量によって変わる(1g/日以上なら125/75mmHg未満)のも、同じ理屈です。漏れが多い人ほど腎臓が壊れるスピードが速いため、より厳しく血圧を管理します。実際の治療方針は、腎生検の所見や腎機能によって一人ひとり異なります。
看護のポイント
IgA腎症の看護でいちばん難しいのは、患者さんが「つらくない」ことです。痛くもかゆくもないのに、減塩を続け、薬を飲み、通院を続けてもらわなければなりません。関連図で「今日の内服が、20年後の透析回避につながっている」という道筋を自分の中で描けていると、指導の言葉に説得力が出ます。
まとめ
IgA腎症の関連図は、一見バラバラに見える症状も、たどっていくと全部つながります。丸暗記ではなく、矢印で理解してみてください。
追加した関連図が、みなさんの実習記録づくりの助けになればうれしいです。「この疾患も追加してほしい」というリクエストは、公式LINEやお問い合わせからいつでもお待ちしています!
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■ 出典・参考資料
- 難病情報センター「IgA腎症(指定難病66)」https://www.nanbyou.or.jp/entry/41
- 難病情報センター「IgA腎症 診断基準等(指定難病66)」https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/File/066-201804-kijyun.pdf
- 日本腎臓学会「診療ガイドライン」https://jsn.or.jp/medic/guideline/