関連図

実習記録を時短|「IgA血管炎」の関連図をイラストで解説

看護学生のみなさんにお知らせです!

このたび、「らくらく関連図」アプリにIgA血管炎の関連図を追加しました。小児科の実習に行く方や、「紫斑・関節痛・腹痛・腎炎がどうしてひとつの病気にまとまるの?」とモヤモヤしている方に、ぜひ使ってほしい1枚です。

IgA血管炎は、皮膚・関節・消化管・腎臓と、まったく違う場所に症状が出ます。バラバラに覚えようとすると必ず混乱しますが、実は全部「同じ1つのできごと」が、場所を変えて起きているだけです。この記事では、追加した関連図の流れにそって、原因から症状・合併症までを1本の矢印でつなげて解説します。

IgA血管炎とはどんな病気?

IgA血管炎とは?異常なIgAの免疫複合体が全身の小血管に沈着し、皮膚の紫斑・関節痛・腹痛・腎炎に枝分かれする流れの図解

IgA血管炎は、異常なIgA(免疫グロブリンA)を含む免疫複合体が、皮膚・関節・消化管・腎臓などの小血管の壁に沈着して炎症を起こす、全身性の小血管炎です。以前はヘノッホ・シェーンライン紫斑病アレルギー性紫斑病と呼ばれていました。実習先や参考書によって呼び名が違うことがあるので、同じ病気だと知っておくと迷いません。

特徴は、まったく別々の場所に、同時に症状が出ることです。皮膚には紫斑、関節には関節痛、お腹には腹痛、腎臓には血尿や蛋白尿。一見バラバラですが、起きていることは全部同じで、「沈着した小血管の場所が違うだけ」です。ここが理解できると、この疾患は一気にラクになります。

好発年齢は3〜7歳で、患者さんの75%は2〜11歳です。発症は年間10万人あたり約20人で、男女比は1.3〜2.3対1とやや男児に多いとされています。秋から冬に多く、かぜなどの上気道感染が先行することが多いのも特徴です(出典:小児慢性特定疾病情報センター「紫斑病性腎炎」)。

症状の出現率は、紫斑100%、関節炎80%、腹痛60%、腎炎50%程度と報告されています(出典:難病情報センター「紫斑病性腎炎(指定難病224)」)。紫斑は全員に出ますが、腎炎が出るかどうかは半々——この温度差が、あとで見る「なぜ長期フォローが必要なのか」につながります。

経過としては、多くは数週間から数か月で自然に改善します。ただし腎障害を合併した場合(=紫斑病性腎炎)は話が別で、長期的な経過観察が必要になります。紫斑病性腎炎は指定難病224に指定されており、患者数は年間400〜640例と推計されています(出典:難病情報センター)。

正常な小血管と、IgAのはたらき

正常な小血管のつくりとIgAのはたらき。血管内皮細胞と基底膜が赤血球も血漿も通さないことを示した図解

関連図を読む前に、正常な状態を確認しておきます。IgA血管炎の症状は、すべて「小血管の壁が壊れる」という1点から枝分かれします。ここを押さえると、あとの流れが全部つながります。

まずIgA(免疫グロブリンA)は、のど・腸・気道といった粘膜を守る抗体です。外から入ってきた細菌やウイルスに粘膜の表面でくっついて、体の中に入らせないようにする「関所の見張り役」だと考えてください。本来は、私たちを守ってくれる味方です。

次に小血管です。細動脈・毛細血管・細静脈といった細い血管の壁は、内側から血管内皮細胞で覆われ、その外側を基底膜が支えています。内皮細胞どうしはすき間なく手をつないでいるため、赤血球や血漿(血液の液体成分)は血管の外へ出られません。酸素や栄養など、小さなものだけが通り抜けるしくみです。

この状態が保たれているから、皮膚に出血斑は出ませんし、関節や腸の壁がむくむこともありません。逆に言えば、紫斑が出ている=小血管の壁が壊れて赤血球が漏れている腸がむくんでいる=血漿成分が漏れているということです。

そして、IgA血管炎で壊れるのはこの小血管の壁です。腎臓では糸球体の毛細血管、皮膚では真皮の小血管、関節では関節周囲の小血管、消化管では腸管壁の小血管——場所は違っても、壊れているのは同じ「小血管」です。

IgA血管炎の原因の関連図

IgA血管炎の関連図の全体像。赤い矢印で原因(異常なIgAの産生・上気道感染)の位置を示している
らくらく関連図アプリより一部抜粋

IgA血管炎のはっきりした原因は、まだ解明されていません。ただし、「異常なIgAが作られること」「そのきっかけとなる感染」という2つの流れが関わっていると考えられています。関連図でも、この2本の矢印が途中で1つに合流します。

原因① 免疫グロブリンの異常

IgA血管炎で血管に炎症が起こるしくみの図解。異常なIgAの産生から免疫複合体の形成、小血管壁への沈着、補体活性化と好中球浸潤を経て小血管の炎症に至る7ステップ

出発点は、体を守るはずのIgAそのものに異常が起きることです。

まず、異常なIgA(免疫グロブリンA)が産生されます。このIgAは、糖鎖という「飾り」の付き方が通常と違うことが指摘されていて、体にとっては見慣れない形をしています。すると、この異常なIgAを含む免疫複合体が形成され、血液中を循環しはじめます。

血流に乗った免疫複合体は、やがて皮膚・消化管・関節・腎臓などの小血管壁に沈着します。ここが、この病気の決定的な一歩です。血液が全身をめぐる以上、沈着する場所も全身に散らばる——だから、こんなにバラバラな症状が同時に出るのです。

沈着した免疫複合体は補体を活性化させます。すると、そこへ好中球が浸潤してきて、小血管に凝集します。集まった好中球は蛋白質分解酵素などを放出し、その結果小血管壁が損傷し、小血管に炎症が起こります。この状態がIgA血管炎です。

ポイントは、細菌やウイルスが血管を直接攻撃しているのではないということです。自分の免疫のはたらきの結果として、自分の血管が傷つけられています。なお、このとき組織では好中球の核が壊れて散らばる白血球破砕性血管炎という所見が見られ、これが診断の手がかりになります。

原因② 上気道感染

かぜのあとにIgA血管炎が起こるしくみの図解。上気道感染から粘膜免疫系の活性化、IgA産生増加を経て免疫複合体の形成に合流する6ステップ

もう1本が、上気道感染のルートです。IgA血管炎の患者さんに「発症の1〜2週間前にかぜをひいた」というエピソードが多いのは、この流れがあるからです。

かぜをひくと、上気道粘膜への病原体抗原の侵入が起こります。すると、粘膜を守るしくみである粘膜免疫系が活性化します。ここは本来、正しい反応です。体は侵入者を追い出そうとしているだけです。

ところが、粘膜免疫系が活性化すると、その担当抗体であるIgAの産生が増加します。もともと異常なIgAを作りやすい素因がある人では、異常なIgAも一緒に増えてしまいます。その結果、IgAを含む免疫複合体が形成され——ここで原因①の流れに合流します。あとは同じで、小血管壁への沈着から炎症へと進んでいきます。

先行感染としては、咽頭炎・扁桃炎などの感染症、溶血性連鎖球菌などの細菌感染、ウイルス感染、消化管感染症などが知られています。そのほか、薬剤・予防接種・食物・虫刺され・遺伝的素因なども関与する可能性が指摘されていますが、明確な原因は不明というのが現在の位置づけです。

実習では、「発症前に、かぜや扁桃炎はありませんでしたか?」という問診がとても大事になります。関連図の矢印の出発点を、自分の口で確認しにいく作業だと思ってください。

IgA血管炎の症状の関連図

IgA血管炎の関連図の全体像。赤い矢印で症状(紫斑・腹痛)の位置を示している
らくらく関連図アプリより一部抜粋

ここからが、この疾患のいちばん大事なところです。紫斑・関節痛・腹痛は、どれも「IgA免疫複合体の沈着 → 補体活性化 → 好中球活性化 → 蛋白質分解酵素の放出 → 小血管壁損傷 → 血管透過性亢進」という、まったく同じ6ステップから始まります。

違うのは沈着した場所と、そこから何が漏れるかだけです。真皮に沈着して赤血球が漏れれば紫斑、関節周囲に沈着して血漿成分が漏れれば関節痛、消化管壁に沈着して血漿成分が漏れれば腹痛。覚えることは3つではなく、1つだと考えてください。

症状① 紫斑

IgA血管炎で紫斑が出るしくみの図解。真皮の小血管への沈着から血管透過性亢進、赤血球の血管外漏出を経て押しても消えない紫斑に至る7ステップ

IgA免疫複合体が真皮の小血管壁に沈着すると、真皮の小血管壁周囲で補体活性化が増悪します。そこへ好中球が活性化して集まり、蛋白質分解酵素を放出。その酵素で小血管壁が損傷し、血管透過性が亢進します。

すき間の広がった血管から赤血球が血管外へ漏出し、皮膚内への出血が起こります。これが紫斑です。

ここで、実習で必ず問われるポイントがあります。IgA血管炎の紫斑は「触れる紫斑(触知可能な紫斑)」で、押しても消えません。血管の外に赤血球が出てしまっているので、上から圧迫しても色は退かないのです。しかも炎症で腫れているため、指でなぞるとわずかに盛り上がっているのがわかります。

出る場所にも特徴があり、下肢と臀部を中心に、左右対称にあらわれます。重力がかかって血管に圧がかかりやすい部位から出るためです。紫斑に加えて、点状出血や、足背・手背・頭皮・顔面などの皮膚の浮腫を伴うこともあります。

なお、紫斑と聞くと血小板減少を思い浮かべる人が多いと思いますが、IgA血管炎では血小板は減りません。血液が固まらないから出血しているのではなく、血管そのものが壊れて漏れている——ここが決定的な違いです。だから検査で血小板数と凝固検査を確認するのです。

症状② 関節痛

IgA血管炎で関節が痛くなるしくみの図解。関節周囲の小血管への沈着から血漿成分の漏出、関節周囲組織の浮腫を経て関節痛に至る7ステップ

次は関節です。IgA免疫複合体が関節周囲の小血管壁へ沈着し、補体活性化が増悪好中球活性化蛋白質分解酵素の放出——ここまでは紫斑とまったく同じ流れです。

その結果関節周囲の小血管壁が損傷し、関節組織周囲の血管透過性が亢進します。紫斑では赤血球が漏れましたが、ここで漏れるのは血漿成分です。関節周囲組織に血漿成分が漏出し、関節周囲組織の浮腫が起こります。

むくんだ組織では炎症物質が増加し、それが侵害受容器を刺激することで関節痛として感じられます。関節の腫脹や、痛みによる歩行困難を伴うこともあります。

大事なのは、これは関節の中(関節腔)が壊れているわけではないという点です。あくまで関節の「まわり」の組織がむくんでいるだけなので、関節リウマチのように骨や軟骨が破壊されて変形が残ることは、基本的にありません。炎症がおさまれば関節も元に戻ります。膝や足首など下肢の関節に出やすく、紫斑と同じ時期に見られることが多いです。

症状③ 腹痛

IgA血管炎で腹痛が起こるしくみの図解。消化管壁の小血管への沈着から腸管壁浮腫、炎症性物質の増加を経て腹痛・血便・悪心嘔吐に至る7ステップ

3つめは消化管です。IgA免疫複合体が消化管壁の小血管へ沈着し、消化管周囲の小血管壁で補体活性化が増悪好中球活性化蛋白質分解酵素の放出消化管壁の小血管損傷——やはり同じ流れです。

そして消化管周囲の血管透過性が亢進し、腸管壁組織へ血漿成分が漏出して腸管壁浮腫が起こります。むくんだ腸管壁では炎症性物質が増加し、侵害受容器を刺激して腹痛となります。

この腹痛は強く、差し込むような痛みになることが多く、腹痛が60%程度に出現するとされています。紫斑より先に腹痛が出ることもあり、その場合は急性腹症として扱われて診断が難しくなります。「お腹が痛い子どもの足に、あとから紫斑が出てきて診断がついた」というのは、実際によくある経過です。

同じ腸管壁浮腫からは、ほかの症状も枝分かれします。炎症が腸粘膜へ波及すると腸粘膜の潰瘍・びらんができ、そこから血液が腸管内へ流出して便と混ざり、血便になります。また、腸管壁がむくんで消化管運動障害が起こると、腸内容物が停滞して腸管壁が伸展し、内臓求心性神経が刺激されて嘔吐中枢が刺激され、悪心・嘔吐が出ます。食欲低下もよく見られます。

そして、この腸管壁浮腫こそが、次に見る合併症の入口になります。

IgA血管炎の合併症の関連図

IgA血管炎の合併症の関連図。腸管壁浮腫から腸重積に至る流れと、糸球体メサンギウムへの沈着から腎機能低下・ネフローゼ症候群に至る流れ
らくらく関連図アプリより一部抜粋

合併症は、大きく消化管のトラブル腎臓のトラブルに分かれます。ここでは腸重積腎機能障害ネフローゼ症候群を取り上げます。

腸重積は症状③で見た腸管壁浮腫の続き、腎機能障害とネフローゼ症候群は糸球体への沈着から始まる流れです。「命に関わるのは消化管、将来に関わるのは腎臓」——この2つの視点で読むと整理しやすくなります。

合併症① 腸重積

IgA血管炎から腸重積になるしくみの図解。腸管壁浮腫から局所的な肥厚、蠕動による移動を経て腸管が腸管内へ陥入するまでの6ステップ

腹痛の流れの途中にあった腸管壁浮腫から続きます。むくみが強くなると、腸管壁が局所的に肥厚して、その部分だけ厚く盛り上がります。

ここで腸のはたらきを思い出してください。腸は内容物を先へ送るために蠕動運動をしています。この蠕動によって、厚くなった部分が「先進部」となって前へ押し出されていきます。そして肥厚部が隣の腸管内へ陥入し、腸が腸の中に入り込んだ状態——腸重積になります。

イメージとしては、靴下の履き口を内側に折り込んでいく感じです。厚みのある部分が引っかかって、そのまま奥へ引きずり込まれていきます。

腸重積になると、重なった部分で血流が悪くなるため、急いで対応しなければならない状態です。治療は、まず注腸や空気による整復を行い、整復できない場合や腸管が壊死している場合は外科手術になります。

同じ腸管壁浮腫からは、腸管内腔の狭窄 → 腸内容物の通過障害 → 腸閉塞という流れや、小血管内の血栓形成 → 腸管血流低下 → 腸管虚血 → 腸管壁壊死 → 腸管穿孔という流れも枝分かれします。強い腹痛・繰り返す嘔吐・血便がそろったときは、これらを疑って報告する必要があります。

合併症② 腎機能障害

IgA血管炎で腎機能が落ちていくしくみの図解。糸球体への沈着から蛋白尿、尿細管間質の線維化、糸球体硬化を経て腎機能低下と悪循環に至る8ステップ

ここからが腎臓です。IgA血管炎で腎炎を合併した状態を紫斑病性腎炎と呼び、この病気の長期予後を決める最重要ポイントになります。

IgA免疫複合体が糸球体メサンギウムへ沈着すると、糸球体炎症が起こり、糸球体毛細血管壁が損傷します。すると糸球体濾過障壁の透過性が亢進し、本来通れないはずのものが尿へ漏れ出します。赤血球が漏れれば血尿、蛋白質が漏れれば蛋白尿です。

問題はその先です。漏れ出た蛋白質は尿細管を通っていくため、尿細管への蛋白質負荷が増加します。本来ほとんど蛋白質が来ない場所に大量に流れ込むので、尿細管間質に炎症が起こり、慢性化すると尿細管間質の線維化が進みます。

線維化した組織はかたくなり、もう元には戻りません。その影響で糸球体硬化が進み、はたらける機能ネフロン数が減少して糸球体濾過量が低下、最終的に腎機能低下に至ります。

腎機能が落ちると、そこからさらに枝分かれします。エリスロポエチンの産生が低下 → 赤血球産生低下 → 腎性貧血 → 血液の酸素運搬能低下 → 全身組織への酸素供給低下 → 倦怠感。また、老廃物の排出低下 → 尿毒素が血液中に蓄積 → 全身の臓器・神経・筋肉へ影響 → 倦怠感という流れもあります。急性腎障害を起こすこともあります。

もうひとつ、高血圧のルートもあります。糸球体濾過量が低下すると水分・ナトリウムの排泄が低下し、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系が活性化循環血液量と末梢血管抵抗が増加して高血圧になります。そしてこの高血圧が、また腎臓を傷つけていきます。

ここで、この病気でいちばん怖いことをお伝えします。腎炎は、紫斑が治ったあとから遅れて出てくることがあります。実際、経過観察を中断した患者さんの66.7%で、数年後に血尿や蛋白尿が再燃したという報告があります(出典:難病情報センター「紫斑病性腎炎(指定難病224)」)。紫斑が消えても、少なくとも6か月程度は尿検査と血圧を確認し続ける必要があるのは、このためです。

合併症③ ネフローゼ症候群

IgA血管炎からネフローゼ症候群になるしくみの図解。蛋白尿から大量蛋白尿、低アルブミン血症、膠質浸透圧低下を経て全身の浮腫に至る7ステップ

合併症②と途中まで同じ道をたどります。糸球体への沈着 → 糸球体炎症 → 糸球体毛細血管壁損傷 → 糸球体濾過障壁の透過性亢進 → 蛋白質が尿中へ漏出 → 蛋白尿。ここから、漏れる量がさらに増えて大量蛋白尿になると、血液中のアルブミンが減っていき低アルブミン血症になります。

大量の蛋白尿と低アルブミン血症がそろった状態ネフローゼ症候群です。

そして浮腫が起こります。アルブミンは、血管の中に水を引き止めておく力=血漿膠質浸透圧を生み出しています。アルブミンが減るとこの血漿膠質浸透圧が低下し、血管内の水分が間質へ移動していきます。さらに体は「血液量が足りない」と判断して水分・ナトリウムを貯留するため、体全体の水分量が増え、浮腫となって現れます。

ここで気をつけたいのが、浮腫の見分けです。IgA血管炎では、症状としての皮膚の浮腫(足背・手背・頭皮・顔面など、血管炎そのものによるむくみ)も出ます。一方、ネフローゼ症候群の浮腫は低アルブミン血症による全身性のむくみで、意味がまったく違います。体重の増加と、尿蛋白の量をあわせて見ることで区別できます。

予後の面では、ネフローゼ症候群を呈した場合の腎不全への移行率は40%、腎炎症候群とネフローゼ症候群の両方を呈した場合は50%以上と報告されています(出典:小児慢性特定疾病情報センター「紫斑病性腎炎」)。紫斑病性腎炎のなかでも、ネフローゼ症候群まで進んだ患者さんは特に慎重なフォローが必要だということです。

IgA血管炎の検査

IgA血管炎は、主に臨床症状から診断します。触れる紫斑・腹痛・関節症状・腎症状がそろえば、それだけで診断がつくことも多い病気です。では何のために検査をするのかというと、①ほかの病気ではないことを確かめる ②腎炎が出ていないかを見張る ③消化管の合併症を見つける——この3つのためです。この視点で見ると、検査項目の意味が読み取れます。

■ 尿検査
尿潜血
血尿の有無をみる
尿沈渣
尿中の赤血球や赤血球円柱を確認し、腎炎の有無をみる
尿蛋白定性・定量
蛋白尿の有無と、どれだけ漏れているかを評価する
尿蛋白・クレアチニン比
随時尿から1日あたりの蛋白尿量を推定し、腎炎の重症度をみる
24時間蓄尿
1日あたりの尿蛋白量や腎機能をより正確に評価する
尿量測定
乏尿や急性腎障害の有無をみる

この病気でいちばん大事な検査が、この尿検査です。紫斑や腹痛は目に見えますが、腎炎は静かに始まります。しかも遅れて出てきます。だから、症状が落ち着いたあとも尿検査を繰り返すのです。

■ 血液検査
血算
貧血、感染、炎症の有無をみる
血小板数
血小板減少による紫斑ではないことを確認する
凝固検査
血液凝固異常による紫斑ではないことを確認する
炎症反応(CRP・赤血球沈降速度)
全身の炎症の程度をみる
血清クレアチニン・推算糸球体濾過量・尿素窒素
腎機能低下の有無と程度をみる
電解質
腎機能低下に伴うナトリウムやカリウムなどの異常をみる
総蛋白・アルブミン
蛋白尿や消化管からの蛋白喪失による低蛋白血症をみる
血清免疫グロブリンA
血液中のIgAの増加をみる
血清補体
ほかの血管炎や糸球体腎炎との区別に用いる
便潜血
目に見えない消化管出血の有無をみる

血小板数と凝固検査が入っている理由を、もう一度確認しておきましょう。紫斑が出る病気には、特発性血小板減少性紫斑病のように「血が固まらないから出血する」タイプがあります。IgA血管炎は血管が壊れて漏れるタイプなので、血小板も凝固能も正常です。「正常であることを確かめる検査」という位置づけです。

■ 身体診察・画像検査
皮膚の観察
下肢や臀部を中心とした、圧迫しても消えない触知可能な紫斑を確認する
腹部診察
腹痛、圧痛、腹部膨満、消化管出血の有無をみる
関節の観察
関節痛、腫脹、可動域制限の有無をみる
浮腫の観察
腎障害や低アルブミン血症の有無をみる
血圧測定
腎炎に伴う高血圧の有無をみる
体重測定
浮腫や体液貯留による体重増加をみる
腹部超音波検査
腸管壁の浮腫、腸重積、腹水などを確認する
腹部CT
重い腹痛や消化管出血がある場合に、腸管炎症・虚血・穿孔などを評価する
陰嚢超音波検査
陰嚢痛や腫脹がある場合に、精巣捻転や精巣上体炎との区別を行う

看護学生が実習で毎日かかわるのは、じつはこの身体診察の部分です。紫斑の広がり、お腹の張り、関節の腫れ、むくみ、血圧、体重。特別な機械がなくてもできる観察が、この病気ではそのまま重要な情報になります。

■ 生検・経過観察
皮膚生検
紫斑が典型的でない場合や、ほかの血管炎との区別が必要な場合に行う
光学顕微鏡:小血管壁への好中球浸潤、血管壁の損傷、好中球の核の破砕
蛍光抗体法:皮膚の小血管壁へのIgAの沈着
腎生検
高度な蛋白尿、腎機能低下、高血圧、持続する尿異常などがある場合に、腎炎の重症度を評価する
光学顕微鏡:メサンギウム細胞の増殖、半月体形成、糸球体硬化
蛍光抗体法:糸球体メサンギウム領域へのIgA優位の沈着
電子顕微鏡:メサンギウム領域の高電子密度沈着物
経過観察
定期的な尿検査・血圧測定・腎機能検査を行う。症状が改善した後も、少なくとも6か月程度は尿所見と血圧を継続して確認する

腎生検の所見に「メサンギウム領域へのIgA優位の沈着」とあることに注目してください。これはIgA腎症とまったく同じ所見です。腎臓だけを見ると区別がつかず、紫斑や腹痛といった腎臓の外の症状があるかどうかで見分けます。IgA腎症の関連図とあわせて読むと、この2つの疾患の関係がよくわかります。

IgA血管炎の治療

治療の考え方はシンプルです。多くは自然によくなるので、基本は「安静と経過観察」。つらい症状は薬でやわらげ、腎炎が出たらしっかり治療する——この3段構えです。

■ 安静・経過観察と生活管理
経過観察
軽症例では自然に改善することが多いため、症状を観察しながら経過をみる
安静
紫斑や関節痛が強い時期は、下肢への負担を減らして安静を保つ
定期評価
尿検査、血圧、腎機能を定期的に確認し、腎炎の出現や悪化を早期に発見する
適切な水分補給
発熱、嘔吐、下痢による脱水を予防する
消化のよい食事
腹痛や嘔吐がある場合に消化管への負担を減らす
一時的な絶食
強い腹痛、消化管出血、腸重積が疑われる場合に腸管を安静にする
減塩
浮腫、高血圧、腎炎がある場合に体液貯留や血圧上昇を抑える

紫斑が下肢に出やすいのは、立っているあいだ下肢の小血管に圧がかかるからでした。だから安静にすると紫斑が引きやすい——関連図をたどれば、この指導の理由がちゃんと説明できます。

■ 薬物療法
アセトアミノフェン
発熱や関節痛を軽減する
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
関節痛や炎症を軽減する。ただし腎機能低下・消化管出血・強い腹部症状がある場合は使用を避けるか慎重に判断する
副腎皮質ステロイド薬
免疫反応と血管の炎症を抑える。強い腹痛、消化管出血、著しい関節症状、陰嚢症状などを速やかに軽減する目的で使用する
レニン・アンジオテンシン系阻害薬(ACE阻害薬・ARB)
糸球体内圧を低下させて蛋白尿を減らし、高血圧を改善して腎機能低下の進行を抑える。持続する蛋白尿や高血圧を伴う紫斑病性腎炎で使用する
免疫抑制薬
シクロホスファミド(急速進行性糸球体腎炎や半月体形成を伴う重症腎炎)、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン(ステロイドの減量や再発予防)、シクロスポリン・タクロリムス(難治性の蛋白尿や腎炎)などを使い分ける

NSAIDsの注意点は、国試でも実習でも問われるところです。NSAIDsは腎血流を減らし、胃粘膜を荒らす作用があります。ただでさえ腎臓と消化管がやられている病気に、その2つを追い打ちする薬——と考えると、なぜ慎重になるのかが腑に落ちます。

■ 合併症に対する治療
点滴治療
絶食中の水分や電解質を補給する
副腎皮質ステロイド薬
強い腹痛や腸管壁の炎症・浮腫を軽減する
腸重積の整復
注腸や空気によって重なった腸管を元に戻す
外科手術
整復できない腸重積、腸管壊死、腸管穿孔などに対して行う
腎代替療法
末期腎不全に至った場合に、血液透析・腹膜透析・腎移植を行う

ステロイドが「腸管壁の浮腫を軽減する」と書かれているのは、浮腫こそが腹痛と腸重積の入口だったからです。むくみを引かせることが、そのまま腸重積の予防になります。関連図の矢印のどこを狙った治療なのかを意識すると、薬の役割が立体的に見えてきます。

看護のポイント

■ 看護のポイント
紫斑の観察
出現部位(下肢・臀部が中心)、範囲、色調の変化、新しい紫斑が増えていないかを記録する。範囲を図に描いて残すと変化がわかりやすい
腹部症状の観察
腹痛の強さ・部位・持続時間、腹部膨満、嘔吐、血便の有無。激しい腹痛・繰り返す嘔吐・血便は腸重積や腸管穿孔のサインとして、すぐに報告する
関節症状の観察
関節の腫脹・熱感・可動域制限、歩行の様子。痛みで動けないときは日常生活の援助を行う
尿の観察
色(赤色・赤褐色)、泡立ち、尿量。検尿の結果と体重をあわせて経過を追う
浮腫と体重の管理
まぶた・顔面・下腿の圧痕、毎日同一条件での体重測定、水分出納バランス
血圧測定
腎炎に伴う高血圧を早期に発見する。小児では年齢ごとの基準値で評価する
安静の援助
紫斑や関節痛が強い時期は下肢への負担を減らす。ただし退屈しやすい年代のため、ベッド上でできる遊びや学習を工夫する
食事の援助
腹痛時は消化のよい食事、絶食時は口腔ケアと水分管理。浮腫・高血圧があれば減塩を家族と一緒に考える
感染予防
上気道感染が発症・再燃の引き金になる。手洗い・含嗽・体調管理を本人と家族に指導する
退院後の継続受診の説明
紫斑が消えても腎炎は遅れて出てくることがある。「治ったからもう行かなくていい」とならないよう、6か月程度の尿検査・血圧のフォローの意味を家族に伝える
家族への支援
小児に多く、突然の入院や見た目の紫斑に家族が強い不安を抱きやすい。多くは自然に軽快することを含めて、見通しを共有する

IgA血管炎の看護でいちばん大事なのは、「今つらい症状」と「あとから来る腎炎」の両方を見ていることです。目の前の紫斑や腹痛のケアをしながら、同時に尿と血圧を追いかける。関連図で「腹痛の先に腸重積があり、蛋白尿の先に腎不全がある」という道筋を持っておくと、毎日の観察が「ただの記録」ではなくなります。

まとめ

IgA血管炎の関連図は、バラバラに見える症状も、たどっていくと全部つながります。丸暗記ではなく、矢印で理解してみてください。

原因
異常なIgA免疫複合体が形成血液中を循環全身の小血管壁へ沈着補体活性化好中球浸潤小血管壁損傷小血管の炎症
もう1本の原因
上気道感染粘膜免疫系の活性化IgA産生増加免疫複合体の形成(①に合流)
共通の分岐点
沈着補体活性化好中球活性化蛋白分解酵素の放出小血管壁損傷血管透過性亢進
真皮に沈着赤血球が漏れる皮膚内への出血紫斑(押しても消えない・触れる紫斑)
関節周囲に沈着血漿成分が漏れる関節周囲組織の浮腫関節痛
消化管壁に沈着血漿成分が漏れる腸管壁浮腫腹痛局所的な肥厚蠕動で移動腸管内へ陥入腸重積
糸球体に沈着濾過障壁の透過性亢進血尿・蛋白尿尿細管間質の線維化糸球体硬化腎機能障害/大量蛋白尿低アルブミン血症ネフローゼ症候群

覚えるコツは、「どこの小血管に沈着したか」だけを場所ごとに入れ替えることです。あとの流れは全部同じ。この1本を押さえてしまえば、実習記録も看護計画も一気に書きやすくなります。

追加した関連図が、みなさんの実習記録づくりの助けになればうれしいです。「この疾患も追加してほしい」というリクエストは、公式LINEやお問い合わせからいつでもお待ちしています!

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■ 出典・参考資料